改訂新版 世界大百科事典 「アスコセントルム」の意味・わかりやすい解説
アスコセントルム
Ascocentrum
小型で多数の小花を総状につける着生ラン。インド東部からインドネシアに数種が分布し,いずれもかわいらしく観賞に供される。茎は直立し,15cm前後,左右に肉厚の葉を互生し,花茎は葉腋(ようえき)から直上し,花径1.5cmくらいの花を多数つけ,円筒状になる。花色は桃色,赤,黄橙など。花期は日本では春から初夏が多い。日本で見かけるのはアスコセントルム・アンプラケウムA.ampullaceum Schltr.,アスコセントルム・ミニアツムA.miniatum Schltr.である。前者は1839年ヨーロッパに紹介され,後者は46年インドネシアで発見された。アスコセントルム属Ascocentrumはかつてはサッコラビウム属Saccolabiumに所属させられたことがある。またバンダ属Vandaと交雑してアスコケンダAscocendaを,フウランと交雑してアスコフィネティアAscofinetiaなどの属間雑種も育成され,品種改良の点でも注目される。越冬には最低10℃必要で,春から秋までは戸外で,寒冷紗越しの日光にあてる。繁殖は株分けで,春に行う。
執筆者:江尻 光一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報