改訂新版 世界大百科事典 「アゼガヤツリ」の意味・わかりやすい解説
アゼガヤツリ
Pycreus flavidus (Retz.) T.Koyama(=Cyperus globosus All.)
水田のあぜや,池沼の縁,河川の岸などの湿った土地に生える,カヤツリグサ科の雑草。全体に細くて硬い一年草で,ひげ根があり,小さな株を作る。茎は高さ20~60cm,幅1mm以下で節はなく,根もとに細い線形の葉が2~3枚あり,8~10月,頂に2~3枚の苞葉と少数個の枝のある花序をつける。小穂は赤褐色か紫褐色で,細く,扁平。果実は左右から強く扁平となったレンズ形で,花柱には2個の柱頭がある。地中海地方からオーストラリアまで,ユーラシア大陸と熱帯アジアに広く分布し,日本では北海道を除いた全国の低地や山中の湿地に見られる。
本種は同じく水田の雑草であるカワラスガナP.sanguinolentus (Vahl) Neesなどとともに,カヤツリグサ属にごく近縁なアゼガヤツリ属に分類される。カヤツリグサ属の果実が三稜形であるのに対して,アゼガヤツリ属の果実は左右から扁平のレンズ形をなし,左右の2面しかもたない点で区別される。
執筆者:小山 鐵夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報