カヤツリグサ科(読み)カヤツリグサか

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カヤツリグサ科」の意味・わかりやすい解説

カヤツリグサ科
カヤツリグサか
Cyperaceae

単子葉植物カヤツリグサ目の1科。全世界の熱帯から寒帯まで,また,極端な乾燥地から水湿地にいたるほとんどあらゆる環境条件に分布し,約 90属 4000種が知られる。イネ科植物に似た,線状の葉をもつ多年草であるが,イネ科と違って茎は中実 (イネ科ではほとんどが中空) で,葉は3列 (イネ科では2列) に並ぶ。このため茎の断面が三角形になる場合が多い。根茎が発達するものも多い。花は数個ずつ集って「小穂」をつくり,この小穂がさらに多数集って花序をなす。個々の花は小さく,花被をまったくもたないもの (カヤツリグサ属 Cyperusなど) から,花被が6本の針状になったものまでさまざまである。おしべは1~3本,めしべは1本であるが,両者を共有する両性花 (ハリイ属 Eleocharisなど) と,雌雄花が別々な単性花 (スゲ属 Carexなど) とがある。いずれの場合も風媒花である。スゲ属では雌花のめしべを壺形の硬い袋 (果胞) がおおっている。スゲ属はカヤツリグサ科全体の半分近くの種数があり,日本だけでも約 200種が知られ,種子植物で最大種数をもつ属である。なお,英語ではイネ科の草本を grassというのに対し,カヤツリグサ科の植物は sedgeと呼ぶ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カヤツリグサ科」の意味・わかりやすい解説

カヤツリグサ科
かやつりぐさか
[学] Cyperaceae

単子葉植物。熱帯から寒帯までのあらゆる条件下に生え、世界に約45属4000種ほどが知られ、イネ科やラン科についで大きな科である。日本には約20属、350種ほどが分布する。花は風媒で単純化が進んでいる。アブラガヤ属、フトイ属、ハリイ属、ワタスゲ属などは両性花で退化した花被(かひ)をもち、ハタガヤ属、テンツキ属、カヤツリグサ属などは両性花であるが、花被片は消失している。ヒゲハリスゲ属やスゲ属では花はさらに単純化し、花被もない単性花になり、それらの花が数個から十数個集まって小穂をつくる。イグサ科近縁で、イネ科とは直接の類縁関係はないとされている。この科の植物はイネ科のように重要な食料になったものはなく、わずかに笠(かさ)や莚(むしろ)、籠(かご)を編むのに利用され、塊茎が食用にされるものがいくつかあるだけである。一方、水田や畑、果樹園などに雑草として生えるものが多く、農作物に大きな被害を与えるものもある。

[木下栄一郎 2019年7月19日]

 APG分類でもカヤツリグサ科とされ、この分類法に基づくと世界に約100属5000種があるとされる(2018年のデータによる)。

[編集部 2019年7月19日]


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