ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アッティス」の意味・わかりやすい解説
アッティス
Attis
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…古代西アジアでは大地の女神イシュタルの恋人は植物神たる木で,女神と木の聖婚(ヒエロス・ガモス)によって,大地は春の再生と冬の種子ごもりを繰り返す。古代ローマでも,大地と豊饒の女神キュベレは,アッティスと聖婚し,これを殺して松に変える。ギリシアのアドニスは没薬(ミュラMyrrha)の木から生まれた。…
…このほか,春分の日にも祭りが行われた。たとえば,古代ローマ人は春分の日の前日,植物神アッティスの死の儀式を厳かに行い,春分当日には同じ神の復活を祝うにぎやかな祭りを行った。このように,数多くの異教の祭日のうち,いずれの祭日を重視するかは種族により,地方により,また時代によりそれぞれ異なっており,祭日の祝い方もさまざまであった。…
…もともと古代のフリュギア(小アジアの中部から北西部にまたがる)地方の大母神。豊穣多産の女神として,その若い恋人アッティスAttisとともに小アジア一帯でさかんに崇拝された。ギリシアへは前5世紀後半に伝わり,じきにゼウスの母神レアと同一視された。…
…それは植物神の死を悲しむ慟哭(どうこく)にはじまり,復活再生の祈願を経て,熱狂的な再生の歓喜でもって終わる一連の儀礼として定型化されていた。小アジアのフリュギア地方に伝わるアッティス崇拝では,穀物神アッティスの死を嘆き,その再生を祈願する人々が,自己の肉体を切り裂き,その血と肉をアッティスの愛人女神キュベレに捧げたあと,アッティスの復活を祝う狂熱的な歓喜の爆発をもって祭りは終わる。ここでは女神キュベレは,年ごとにその死が嘆かれて春に草木とともに再生する植物霊のシンボルである男神アッティスの再生を左右する原理としてきわめて重要な役割をになっていた。…
…しかし,もともと死と復活という考え方は異教時代からのものであった。フェニキアおよびキプロス島などで崇拝されたアドニスの死と復活の祭礼や,ローマ帝国における植物の死と復活を表象した神アッティスの祭礼などは春分のころに行われ,キリストの受難,死,復活はこれらの祭礼と同化したものであるといわれている。北ヨーロッパの農民も春の芽ぶきを見て,死んだ草木の霊魂の復活を考えたことは当然であろう。…
※「アッティス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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