キュベレ(その他表記)Kybelē

改訂新版 世界大百科事典 「キュベレ」の意味・わかりやすい解説

キュベレ
Kybelē

もともと古代のフリュギア小アジアの中部から北西部にまたがる)地方の大母神。豊穣多産女神として,その若い恋人アッティスAttisとともに小アジア一帯でさかんに崇拝された。ギリシアへは前5世紀後半に伝わり,じきにゼウスの母神レアと同一視された。またローマへは,伝承によれば,第2次ポエニ戦争中の前204年,シビュラ予言書の啓示にもとづいて移入されたといい,パラティヌス丘上の神殿には,フリュギアにおける崇拝の中心地から運んだ女神の聖石が安置された。しかしクラウディウス帝の治世以前には,彼女の神官をつとめるのは東方出身の去勢者に限られ,彼らは祭り行列で鉦(かね),太鼓を打ち鳴らし,フリュギア風の旋律をかなでる笛の音にあわせて熱狂乱舞した。美術作品では,通例,彼女は頭に城壁形の冠をいただき,手には献酒皿とタンバリンを持ち,その両脇にライオンがひかえる座像で表現される。
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百科事典マイペディア 「キュベレ」の意味・わかりやすい解説

キュベレ

小アジア,フリュギア地方の大地母神。ギリシア神話ではレアと同一視される。豊穣・多産の女神として,若い配偶神アッティスAttisとともに広く崇拝された。その祭礼鳴り物をともなう熱狂乱舞の行列で知られ,神官ないし従者をコリュバス(複数形コリュバンテス)という。
→関連項目ガイアフリュギア

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キュベレ」の意味・わかりやすい解説

キュベレ
Kybelē

前5世紀以前から小アジアで広く崇拝されていた女神。名称はフリュギアの山の名に由来。山,森,野獣守護神で,偉大なる母,神々の母ともいわれ,愛人のアッチスとともに,去勢し女装した祭司たちにより,狂騒的祭祀を受けた。ギリシア圏では神々の母レアと同一視されながら,バルバロイの神としてとどまったが,ローマでは公式宗教のなかに取入れられ,東方宗教のローマ浸透の嚆矢となった。ローマでは毎年3月 15~27日その祭りが盛大に祝われた。

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世界大百科事典(旧版)内のキュベレの言及

【石】より

…イスラム教の聖地メッカのモスクの中心カーバには,大天使ガブリエルからアブラハムに与えられたと伝えられる黒石が,〈神の地上における真の右手〉としてまつられているが,このような〈神石〉の崇拝の歴史は人類とともに古い。古代の小アジアでも,フリュギアの大女神キュベレは,黒石を神体としていたが,その石が第2次ポエニ戦争の最中の前204年に,はるばるローマまでもたらされ,ハンニバルの猛攻から国を救った女神として,古代ローマ人の崇拝を受けることになった。古代ギリシアのデルフォイのアポロン神殿の奥殿には,そこが世界の中心であることを示すため,大地ガイアのへそオンファロスOmphalosをかたどった聖石が安置されていたが,このオンファロスに似た世界の中心を表す石の崇拝は,ケルト人のあいだでも盛んだったことが,フランスの諸処に残る習俗などから,確かめられている。…

【聖婚】より

…J.G.フレーザーによると,キプロスにおけるこのような儀礼は,地母神をまつるすべての神殿に共通にみられ,女性は神殿において,しばしば神にみたてた見知らぬ客人に処女を捧げる役割を演じたという。 地母神の名は地域によって変化し,キュベレ(小アジア),イシュタル(バビロニア),イシス(エジプト),アフロディテ(ギリシア),アスタルテ(フェニキア)など呼称は大きく相違しているが,基本的性格はまったく変わらない。バビロニアにおいては,すべての女性はイシュタルの神殿に参籠し,貧富の別にかかわりなく,生涯に一度見知らぬ客人に身を任せ,そこで得た報酬を地母神に奉献することが義務づけられていた。…

【ローマ】より

…シビュラの予言書も同様に伝えられてずっと重視され続けた。そればかりか治癒神アスクレピオス,大地母神キュベレも東方から入り,公認の神となった。しかし密儀と乱脈を伴うディオニュソス(バッコス)礼拝は厳しく弾圧された。…

※「キュベレ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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