祭司(読み)サイシ

デジタル大辞泉の解説

さい‐し【祭司】

祭儀を執り行う者。
ユダヤ教で、神殿に奉仕して儀式をつかさどる者。
未開諸民族で、宗教儀式をつかさどる

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百科事典マイペディアの解説

祭司【さいし】

神霊と人間との間を仲介し,儀礼をつかさどる職にある者。〈司祭〉〈祭官〉〈神官〉などともいい,英語ではpriest。キリスト教の司祭,仏教の僧侶(そうりょ),神道神主などが代表例。予言者や呪術(じゅじゅつ)師と概念的には区別されるが,明確ではない。政治的支配者と祭司が同一人である場合や,インドのバラモンのように閉鎖的な最高位の階層を構成する場合もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

祭司
さいし

呪術(じゅじゅつ)・宗教的職能者または指導者の一つで、世襲または任命や選出によってその地位を占め、一定の集団や信者を代表して霊的(超自然的)存在に祈願や感謝を行い、儀礼を執行する人物。仏教の僧侶(そうりょ)、キリスト教の牧師、神道(しんとう)の神主(かんぬし)などがこれにあたる。

[佐々木宏幹]

おもな学説

祭司の呪術・宗教的な性格や役割は、祭司以外の職能者・指導者の性格・役割と比較すると明らかになる。諸研究者は、祭司と予言者またはシャーマンを対照的に取り上げることが多い。M・ウェーバーは、予言者が個人的地位の保持者であり、その権威は個人の特殊な資質に由来するのに対し、祭司は儀礼的役職の保持者であり、その権威は役職にあるとした。エバンズ・プリチャードSir Edward Evan Evans-Pritchard(1902―73)は、アフリカのヌアー人(ヌエル人)の場合から、次のように述べている。

(1)祭司の力能は最初の祭司から出自により伝承されるのに対して、予言者の力能はカリスマ的・個人的霊感に基づく。

(2)祭司の権威はその役職にあり、予言者のそれは彼自身にある。

(3)祭司において人間は神に語り、予言者において神は人間に語る。

(4)祭司が霊的存在を扱う際、もっとも包括的な意味において扱うのに対し、予言者は特定の霊を扱う。

 またリーチEdmund Donald Leach(1910―89)は、仏教国スリランカの宗教体系を代表する職能者として僧侶(祭司)とカプラーラ(シャーマン)をあげ、両者を次のように類型化している。

(1)僧侶は日常世界から自己の生活を切断し、情念を放棄することに修行の中心を置く。彼は此岸(しがん)にありながら、半分は彼岸(ひがん)にある。彼はこの世とあの世を、自らを半分あの世に投げ込むことによってつなぐ。

(2)カプラーラはエクスタティック・トランスに入り、大地と他界、人間と神を直接媒介する。彼はこの世とあの世のギャップを神をこの世にもたらすことによって埋め合わせる。

 祭司は当該社会の宗教的な伝統の型を学習・修行によって身につけ、その地位につき、その型を次代に忠実に伝達しようとする。したがってその姿勢は保守的、現状維持的になることが多い。また祭司は普遍的な神々や永遠の理法にかかわり、個人よりも社会、現実よりも超越、私的よりも公的側面を強調する。したがって祭司の役割は、伝統的な社会・文化の維持に資するとされる。

[佐々木宏幹]

祭司職の成立

どこにおいても祭司と他の諸職能者とが分化しているわけではない。なかには、祭司、予言者、シャーマン、呪術師などが未分化状態にあるところもある。南米ボリビアのシリオノ人やオーストラリア北部のムルンギン人などでは、同一人物が祭司とシャーマンの役割を果たしており、霊的存在も未分化である。明白な祭司職priesthoodは、組織的な食物生産の可能な社会=農耕社会において成立したとされる。そこでは労働の分業が明確化し、社会の階層化が進み、宗教的職能の分化がみられるようになる。こうした状況において祭司は、宗教的領域における知的エリートとしての地位を確保するに至る。祭司職の成立は、過程的には各地の王権の成立・出現に類似しており、両者の関係についての検討も重要であるといえよう。

[佐々木宏幹]

『M・ウェーバー著、世良晃志郎部分訳『経済と社会』(1960~70・創文社)』『エヴァンズ・プリチャード著、向井元子訳『ヌアー族の宗教』(1982・岩波書店)』『R・N・ベラー著、河合秀和訳『社会変革と宗教倫理』(1973・未来社)』『佐々木宏幹著『人間と宗教のあいだ――宗教人類学覚え書』(1979・耕土社)』

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精選版 日本国語大辞典の解説

さい‐し【祭司】

〘名〙
① ユダヤ教で、祭典をつかさどる人。キリスト教ではふつう司祭。→司祭。〔改訂増補哲学字彙(1884)〕
② 祭儀をとり行なう者。また、宗教上の儀式をとり行なう者。
※他人の顔(1964)〈安部公房〉黒いノート「秘密結社の祭司や、さらには空巣強盗のたぐいにとって、覆面が欠かすことの出来ない必需品だった理由も」

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