日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アブー・サイード・ビン・アビル・ハイル
あぶーさいーどびんあびるはいる
Abū Sa‘īd b. Abi'l-Khayr
(967―1049)
ペルシアの神秘主義聖者、詩人。イラン東部ホラサーン地方のマイハナに生まれ、メルブなどでイスラム諸学を修めた。父の影響で早くから神秘主義にひかれ、アブル・カーシムに師事して修行し、ついに偉大な聖者と仰がれ、郷里で多くの弟子を指導した。神秘主義思想を民衆にやさしく説くために四行詩をつくった。この思想を詩で表現した最初のペルシア詩人として知られるが、西欧の東洋学者には彼の作詩を否定する者もいる。イランの学者たちは作詩を肯定し、700有余の四行詩を収めた『アブー・サイード詩集』を刊行した。彼の生涯と思想は、中世の文献『唯一性の神秘』と『アブー・サイードの生涯と言行』にまとめられている。
[黒柳恒男 2018年4月18日]