日本大百科全書(ニッポニカ) 「アミロ発酵」の意味・わかりやすい解説
アミロ発酵
あみろはっこう
エタノール(エチルアルコール)製造の一方法。フランスのカルメーCalmetteが中国の酒薬のもとからアミロミセス・ルクシイAmylomyces rouxiiというケカビの一種を分離培養し、1895年ボイダンBoidinはこのカビを使って、デンプンを原料としてアルコールを工業的に製造する方法を始めた。この発酵法をアミロミセスの名からアミロ発酵法というようになった。その後の研究で、糖化力の強いリゾップス・デルマーRhizopus delmerやリゾップス・ジャバニクスRhizopus javanicusの新種が発見されるに至り、現在はこの2種やその変種が使われている。アミロ法は発酵槽内でこのカビを増殖させ、デンプン材料(サツマイモなどに水を加えてデンプン濃度15~20%とし、蒸煮、糊(こ)化したもの)を糖化し、さらに酵母を添加してアルコールを生産させる。発酵後に液を蒸留してアルコールを製造する。この場合、糖化は37℃、通気培養、アルコール発酵は30℃、静置培養とする。アミロ法のよい点は発酵期間が短いこと、種菌(たねきん)の接種量が少ないことである。欠点は密閉したタンクが必要なこと、無菌管理が必要なことなどである。別に液体麹(こうじ)を併用するアミロ麹折衷法がある。
[曽根田正己]