ケカビ(読み)けかび

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケカビ」の意味・わかりやすい解説

ケカビ
けかび
[学] Mucor

接合菌類、ケカビ目に属するカビ。ムコールMucorの語がラテン語でカビを意味するように、カビの代表ともいえる群である。自然界の至る所に分布するが、とくにデンプン質の食品や草食動物の糞(ふん)の上によく繁殖し、150種ほどが知られている。菌糸は基物の内外に広がって伸長する。匍匐(ほふく)菌糸は分岐するが隔壁はなく、気中菌糸は毛髪状で高さ数センチメートルにもなる。気中菌糸は直立し、胞子嚢(のう)柄となるが、分岐するものと、しないものがある。胞子嚢柄の先端には胞子嚢が形成され、中に胞子嚢胞子が含まれる。胞子嚢の外膜は薄く、成熟したときに胞子が分散されるが、外膜の外れ方には、溶ける場合と裂ける場合がある。胞子嚢胞子が分散したあとには、中軸が胞子嚢柄の先端に残るが、中軸は胞子嚢柄が胞子嚢中に突出した部分で、球形ないしは卵形である。有性生殖は接合胞子の形成によるが、雌雄異株のものが多い。この属のカビは、乳腐や有機酸の製造などに利用される。

[曽根田正己]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケカビ」の意味・わかりやすい解説

ケカビ(毛黴)
ケカビ
Mucor; pin mold

接合菌類ケカビ目の1属。この属には約 60種近い種がある。炭水化物蛋白質に富んだ基質に生えるので,草食・雑食動物の糞,デンプン性の貯蔵食品などに発生しやすい。土壌腐植質からは容易に分離できる。概して菌糸が毛のように立上がり,頂端に球形の胞子嚢をつける。立上がった菌糸は,初めはすべて無色,古くなると褐色になるものもある。胞子嚢は熟すると黒色になり,その膜は水滴に溶けるか,または裂けて,無数の胞子を外に出す。前者は小動物の体に付着したり,水流で散らされ,後者は風によってばらまかれる。胞子嚢のくずれたあとには,その柄の頂端に柱軸と称する構造が残る。その形は卵形,楕円形,球形,倒卵形,半球形など種によって異なる。多くの種では,基質上をはう菌糸に有性生殖器官を生じる。雌雄同株のものと異株のものとがある。いずれも性的に相対する菌糸の双方から小突起を生じ,その先端に配偶子嚢をつけるが,それらは相接すると合併して一つの接合子嚢となる。接合子嚢は著しく突出したいぼ状の突起をもつ厚膜をかぶっている。

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