改訂新版 世界大百科事典 「アメリカグマ」の意味・わかりやすい解説
アメリカグマ
American black bear
Ursus(=Euarctos)americanus
食肉目クマ科の哺乳類。アラスカからメキシコ中部まで,北アメリカに広く分布する中型のクマ。体長1.5~1.8m,肩高約1m,体重120~150kg。アメリカクロクマとも呼ばれるが,体色は黒色,褐色,白色などさまざまである。
森林地帯に単独で生活し,直径48kmに達する広大な行動圏をもつ。行動圏内の柔らかな樹木にはつめのかき傷や樹皮のはがされた跡がつけられており,クマの木bear treesと呼ばれる。木登りがうまく,動作も敏しょうで力強いが,人に害を与えることはめったにない。おもに夜間活動して,植物,魚,死肉を食べ,家畜を襲うこともある。寒さが近づくと体に脂肪を蓄え,冬には地面の穴や樹洞,ときには雪に掘った穴で休眠に入る。休眠中も体温はあまり低下しないが,呼吸は1分間に4~5回にまで減少し,食物もとらない。比較的暖かい天候が続くと休眠を中断して外を出歩くことがある。交尾期は6月ごろで,交尾後雌雄はすぐに別れる。雌は2年に一度,100~210日の妊娠期間を経て,休眠中の1~2月に1~4子を出産する。アメリカ合衆国とカナダの国立公園では数が大幅に増加している。
→クマ
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報