改訂新版 世界大百科事典 の解説
アメリカン・シーン・ペインティング
American Scene Painting
1920年代から30年代にかけて,アメリカの都市や農村の光景を描いた絵画の総称。さまざまの傾向をふくむが,大きく分けるとキュビスムの影響をうけた半抽象的な系列と写実的な系列の二つがある。前者の舞台になったのは主としてニューヨークで,ブルックリン橋や高層建築をモティーフとして,近代文明を謳歌するステラJoseph Stella,シーラーCharles Sheeler,大都市のバイタリティを抽出したデービスがおり,後者には都会の底辺の日常の光景をとらえたマーシュReginald Marsh,孤独と疎外を描いたホッパー,ソーシャル・リアリズムsocial realismの立場を貫いたシャーンがいる。また,中西部の広大な農村風景を描きつづけたベントン,ウッドGrant Wood(1892-1942),カリーJohn Steuart Curry(1897-1946)などの提唱したリージョナリズムRegionalism(地方主義)も写実的な系列を代表する。彼らは中西部こそアメリカの心のふるさとだとして,反ヨーロッパ・モダニズムの姿勢をとりつづけた。
執筆者:桑原 住雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報