シャーン(読み)しゃーん(英語表記)Ben Shahn

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シャーン」の意味・わかりやすい解説

シャーン
しゃーん
Ben Shahn
(1898―1969)

20世紀アメリカが生んだ典型的な社会派画家絵画レタリングを組み合わせた新しいイメージをつくった。リトアニアコブノに生まれ、1906年ニューヨークに移住。13年からリトグラフ徒弟修業についたほか、ニューヨーク大学などで学ぶ。32年、サッコ‐バンゼッティ事件とトム・ムーニー事件を扱った連作を発表して一躍注目される。30年代から40年代にかけて、画家、デザイナー、写真家として活動し、壁画ポスターなどを制作。第二次世界大戦後も精力的な制作が続き、国際展、個展などの発表が多くなり、そのかたわらハーバード大学などで連続講演を行っている。60年(昭和35)には来日して第五福竜丸事件による連作を描いたことは知られている。彼の業績は大別して二つあり、一つは社会意識を絵画的造形に引き付けた方法論を開発したことであり、もう一つは文字を絵画表現の有力な手段として駆使したことにある。61年ニューヨーク近代美術館で回顧展を開いたほか、没後も各地で作品展が開催されている。

桑原住雄

『ベン・シャーン著、佐藤明訳『ある絵の伝記』(1960・美術出版社)』『バーナーダ・シャーン著、桑原住雄訳『ベン・シャーン画集』(1982・リブロポート)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シャーン」の意味・わかりやすい解説

シャーン
Shahn, Ben(jamin)

[生]1898.9.12. リトアニア
[没]1969.3.14. ニューヨーク
アメリカの画家,グラフィック・デザイナー。両親はユダヤ人で,父は大工,木彫家。 1906年家族とともにアメリカに移住。 13年から石版工の徒弟となり,カリグラフィー (書) に対し強い関心をもった。ナショナル・アカデミー・オブ・デザインで絵を学ぶ。 25,27~29年にヨーロッパ,北アフリカに旅行し,G.ルオー,R.デュフィの影響を受けた。 31~32年「サッコとバンゼッティ事件」に抗議する連作で,社会派の画家として注目される。 33年 D.リベラの助手として壁画制作に従事。第2次世界大戦中は戦時情報局に勤め,『リディス』など,多くの反ナチズムのポスターを制作。戦後も多くのコマーシャル・デザインを制作する一方,『福竜丸 (ラッキー・ドラゴン) 』シリーズ (1961~62) ,『マーティン・ルーサー・キング牧師肖像』などの作品で,アメリカ人の良心を代弁し続けた。画風版画の修業によって獲得された色彩の平面的使用と,書に対する愛着から生れた繊細な線に特徴がある。著書に『ある絵の伝記』 The Shape of Content (57) などがある。

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