2013年に登録された世界遺産(文化遺産)。アラビア半島の東、カタールの首都ドーハの北北西およそ100kmにある考古遺跡。アル・ズバラはクウェート商人が建設した、城壁で囲まれたペルシア湾沿岸の港町。18世紀後半から19世紀初頭、インド洋とアラビア、西アジアとを結ぶ交易拠点として、また真珠生産地として栄えたが、1811年に破壊され、20世紀には放棄された。当地の宮殿やモスク、街路、中庭に向いて建つ邸宅群、漁師小屋、運河、城壁、墓地などは、砂漠から吹き込んだ砂の層に守られており、発掘されているのはごく一部である。しかしそうした発掘物は、都市での交易と、天然真珠を潜って採るという真珠採取の伝統を如実に物語る。真珠生産と交易は、この地方の沿岸の主要都市の経済を支え、オスマン帝国やヨーロッパ、ペルシア帝国などの支配下の外で繁栄する小さな独立国家を生み出した。そして、これらが現代の湾岸諸国の出現につながっていく。こうした歴史的背景も踏まえ、砂漠の中に残るアル・ズバラの城塞跡が世界遺産として登録され、カタール初の世界遺産となった。◇英名はAl Zubarah Archaeological Site