改訂新版 世界大百科事典 「アルチャート」の意味・わかりやすい解説
アルチャート
Andrea Alciato
生没年:1492-1550
イタリアの法学者。人文主義法学の創始者として知られる。ミラノの有力門閥の出で,人文主義者パラージョParrasioにつき古典語と文献学的技術を修得。パビア,ボローニャの大学で法学を修め,1516年ミラノで弁護士を開業。すでにこの間に文献学・歴史学の諸手段に訴えながら伝統的・スコラ的法学を手厳しく批判する《勅法彙纂の最後の3巻に対する注記》(1515),《ローマ法上のパラドックス》(1518)などの作品を発表していたアルチャートは,アビニョン,次いでブールジュの大学(1529-33)に招聘され,その新しい人文主義的な法学の試みによってヨーロッパ的名声を博した。その後イタリアの諸大学で教鞭をとったが,十分な教育効果を得ることはできなかった。歴史学や文学の領域でも当時のヨーロッパ人文主義の最高水準に位置したが,活動の中心は何よりも法学の人文主義的革新にあり,ローマ法大全のテキストをギリシア語の部分を含めて批判的に復元し,これに新しい様式の《注解》を試みた。その際たんに博識を示そうとするのではなく,法学の実用性(ローマ法の実用化)を十分に認識し,また中世以来の〈博士たちの共通見解〉をつねに尊重していた。法実務とも密接なつながりをもっていたことは,800近い法律事件に関する《助言Responsa》を残していることからもよく知られる。
執筆者:佐々木 有司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報