アレッツォ焼(読み)アレッツォやき

改訂新版 世界大百科事典 「アレッツォ焼」の意味・わかりやすい解説

アレッツォ焼 (アレッツォやき)

前30年ころから後40年ころまで,イタリア中部のアレッツォを中心につくられた陶器。よく精製された陶土を用いたテラコッタであるが,薄く硬い陶器であるため,テラコッタとしては焼成温度は高かったと推定される。器の表面には赤褐色系の光沢のあるスリップ(クリーム状にうすめた陶土)がかかり,釉薬をかけたかのような平滑さを有している。この陶器は大きく3グループに分類される。(1)装飾モティーフを陰刻した母型で成型された浮彫装飾を有するグループ,(2)ろくろを用いて成型した後に,母型によって作った装飾モティーフを貼り付けたグループ,(3)無装飾のグループ,である。いずれも単彩で光沢があり,装飾には打出しによるかのような効果があるため,金属器を模倣しようとする意図が強かったと思われ,そのことは器形にも反映している。アレッツォ焼は,ローマ帝政初期の工芸美術の重要な資料であるが,その限られた製作年代のゆえに,年代比定や交易圏を知るうえでも重要な資料なのである。アレッツォ焼とほとんど同じ技法によって作られた陶器をテラ・シギラタと呼び,ガリア,南イタリア,北アフリカなどで製作されたことが知られている。したがってアレッツォ焼は広義のテラ・シギラタに含められる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアレッツォ焼の言及

【ローマ】より

… 共和政末期には奴隷制による大規模工業が出現し始めた。とくに前30年ころから後1世紀半ばまでアレティウム(現,アレッツォ)を中心に生産された赤い光沢のある陶製容器(アレッツォ焼)はギリシア,小アジア以外のほぼ地中海全域(スペイン,北アフリカ,ガリア,イリュリアなど)で発見されており,広範な流通があったことを示している。このほかアンフォラ,ランプ,煉瓦などの焼物工業(北部・中部イタリア),銅細工(カプア),製鉄(プテオリ)などが知られている。…

※「アレッツォ焼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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