改訂新版 世界大百科事典 「アンデルセン童話」の意味・わかりやすい解説
アンデルセン童話 (アンデルセンどうわ)
アンデルセンの童話集。《皇帝の新しい着物》《みにくいアヒルの子》《雪の女王》《マッチ売りの少女》など,彼は150以上の童話や物語を30歳ぐらいから約40年間にわたって書いた。超自然的な巨人(トロル),妖精,魔女などが活躍し,草木や動物,無生物が人間のように話す幻想の世界の物語で,子どもにもわかる素朴で単純な表現を用い,話し言葉を混ぜていきいきと書かれており,ユーモア,ペーソスと機知に富んでいる。民話,史実などを基調にした作品もあるが,作家の深い洞察力や内的経験とかかわりを持つ創作が多く,たび重なる失恋から《人魚姫》が,また姉カーレンのイメージから(それが無意識的であったとしても),人間の強烈な生命力をテーマとする《赤い靴》が生まれたといえる。的確な象徴と,あたたかく美しいイメージによるこれらの童話はアンデルセンにとっても新しいジャンルであったが,それはまた彼の特異な才能を生かすかっこうの場でもあった。
執筆者:岡田 令子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報