化学辞典 第2版 「イオン対生成」の解説
イオン対生成
イオンツイセイセイ
ion-pair formation
電子衝撃または光照射で,次の過程で分子が正負一組のイオンに解離する現象.
AB + ep → AB* + ed → A+ + B- + ed
ここで,ep,ed はそれぞれ入射,減速電子である.この過程で生成する正および負イオンのイオン化効率曲線は,AB* 励起分子の生成する励起関数を示し,一種の自動イオン化である.A+ および B- の出現電圧Ap(A+)とAp(B-)は次式で示される.
Ap(A+) = Ap(B-) = Ip(A) - Ae(B) + De(AB) + Ek + Ee
ここで,Ip(A)はAのイオン化電圧,Ae(B)はBの電子親和力,De(AB)はABの分子の解離エネルギー,Ek および Ee はそれぞれ生成したイオンの運動エネルギーおよび励起エネルギーの和である.この関係から,ほかのパラメーターが別に独立に求められていれば,Bの電子親和力を求めることができる.この現象のほかに,高エネルギー放射線によるイオン化で,正イオンと電子(あるいは負イオン)が生成することもイオン対生成という.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報