解離エネルギー(読み)カイリエネルギー

化学辞典 第2版 「解離エネルギー」の解説

解離エネルギー
カイリエネルギー
dissociation energy

一つの物質が二つ以上の物質に解離するのに必要なエネルギー.1 mol については kJ,分子1個については eV 単位で表される.原物質および生成物質がともに安定な物質の場合は直接熱量測定,あるいは関連する諸反応の反応熱を組み合わせてヘスの法則から間接的に求められる.二原子分子(ハロゲン水素など)の解離エネルギーは,分光学的に吸収帯の収れん限界波長から,生成する遊離原子の励起エネルギーの補正を行って,正確な値が求められる.多原子分子または多原子イオンが解離して短寿命の遊離原子,遊離基,または断片イオンを生じる場合も,関連した諸過程の反応熱(化学的反応熱,イオン化エネルギー出現電圧など)を組み合わせて解離エネルギーが求められるが,遊離基やイオンの熱化学的数値の不正確さのため,その値は近似的である.一つの分子のなかの一つの結合切断に着目した解離エネルギーを,結合解離エネルギー(bond dissociation energy)ということがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「解離エネルギー」の意味・わかりやすい解説

解離エネルギー
かいりえねるぎー
energy of dissociation

多原子分子をその構成元素の原子または分子に分解するのに必要とするエネルギーをいい、熱であるときとくに解離熱heat of dissociationという。通常1モルについてはkJ、分子1個についてはeV単位で表し、それは生成エネルギーに等しい。解離エネルギーの値は、途中段階まで分解して分子で止まるときと、原子にまで分解するのでは大差があり、また生成した分子や原子の電子状態によっても異なる。したがって基底状態の分子、原子が得られたときが標準となる。

 解離エネルギーを求めるには、簡単な分子では光学的方法、すなわち分光スペクトルを観測することによるが、複雑な分子については解離圧の温度変化、あるいは熱量測定法による。

[吉田俊久]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の解離エネルギーの言及

【解離】より

…一般に安定な分子の解離には外部から熱や光などエネルギーを供給することが必要で,それぞれ熱解離,光解離などと呼ばれる。解離に必要なエネルギーを解離熱あるいは解離エネルギーといい,たとえば,二原子分子の塩素Cl2,水素H2,酸素O2,窒素N2の解離熱はそれぞれ243,436,495,942kJ/molで,解離熱が小さいものほど解離しやすい。これらの値は,二原子分子をつくる化学結合の強さを表し,結合エネルギーとも呼ばれる。…

【結合エネルギー】より

…多くの同種の構成粒子をもつ原子核や結晶では,ふつう1構成粒子当りの結合エネルギーを考え,原子核ではこれを比結合エネルギーと呼んでいる。また分子においては,その分子全体の結合エネルギーを解離エネルギーenergy of dissociationと呼び,化学構造式におけるある一つの結合手についての値を結合解離エネルギーbond dissociation energyと呼び,略して結合エネルギーと呼ぶ習慣がある。結晶の結合エネルギーは昇華熱として実験的に測定される。…

※「解離エネルギー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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