改訂新版 世界大百科事典 「イデユコゴメ」の意味・わかりやすい解説
イデユコゴメ
Cyanidium caldarium(Tilden)Geitler
世界各地の温泉中に好んで生育するイデユコゴメ科の単細胞性の特異な紅藻で,89℃の高温の温泉から採集された記録もある。体は白色がかった緑色で,球形または球形に近い単細胞であるが,多数群生するので全体の様子は緑白色の粉末をまき散らしたようである。細胞は直径約5μmまたはそれ以下で,1個の核と1個の膜状の葉緑体をもつ。従来,この藻の分類上の所属にはいろいろと問題があったが,葉緑体が2枚の限界膜に包まれること,クロロフィルaのほかにフィコビリン色素をもつことから,現在では紅藻類と判断されるにいたった。生殖には無性生殖のみが知られ,細胞の内容が三角錐形に分裂して4個の内生胞子を形成する。高温条件下に生育する特異な性質をもつので,生理学,生化学の研究材料によく用いられる。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報