改訂新版 世界大百科事典 「イトコネン」の意味・わかりやすい解説
イトコネン
Erkki Itkonen
生没年:1913-92
フィンランドのフィン・ウゴル語学者。フィンランド北辺のイナリ湖畔に牧師の子として生まれ,早くからラップ語に親しんだ。長じてヘルシンキ大学に学び,ラップ語の専門家としての地位を固めたが,次第にフィン・ウゴル語全般に研究領域を広げ,その指導的権威となった。1956年ヘルシンキ大学正教授,64年にフィンランド・アカデミー会員に選ばれた。厳密な比較言語学の手法に裏づけされた,彼の《フィン・ウゴル語の母音論》(1946,54)は最も有力な仮説とされているし,《フィン・ウゴル語の音声と形態の構造》(1957)も常に参照される重要論文である。また,構造言語学の分析方法を用いた《言語とその研究》(1966)は言語学全領域に及ぶ力作である。なお,語源探究にも精力を傾注し,《フィンランド語語源辞典》6巻(1955-78)を完成させている。
執筆者:小泉 保
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報