日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
イブン・アブド・ラッビヒ
いぶんあぶどらっびひ
Ibn ‘abd Rabbihi
(860―940)
アラブの詩人・作家。スペインの後ウマイヤ朝のカリフ、ヒシャーム・イブン・アブドゥル・ラフマーンの一解放奴隷の子孫で、コルドバで一生を送る。青年時代は歓楽の巷(ちまた)をさまよい、世の快楽を詩に歌ったが、改悛(かいしゅん)して禁欲的な詩作に専念した。20巻以上に上るといわれる詩集は伝わらない。代表作『無類の頸(くび)飾り』は25部に分かれ、各部の標題に宝石の名をつけて、当時の東方アラブの広範な知識水準を伝えている。ただ、この書はスペインのアラブ文化については記述がないが、アラブ文学史上もっとも重要な文献の一つである。
[内記良一]