日本大百科全書(ニッポニカ) 「イボオ」の意味・わかりやすい解説
イボオ
いぼお
Ivo(Yves)de Chartres
(1040ころ―1116ころ)
フランスの神学者、教会政治家、聖人。ボーウェの出身。パリ、ベックで学んだのち司祭となり、さらにシャルトル司教となった(1090)。教会法の当代第一の学識者、聖職叙任権闘争の収拾に大きな役割を果たした。すなわち、教会改革および聖職叙任権闘争に際し、教皇グレゴリウス7世時代の厳格主義を排して緩やかな改革を説き、ローマ教会と世俗権力からの司教の自由を強調したほか、彼の提唱した「俗人による叙任に先だつ聖職者による自由な司教選挙」の原則は、ウォルムス協約(1122)の基礎をなした。また、彼の編纂(へんさん)した『教令集』17巻(1094ころ)と『パノルミア』8巻(1095ころ)は、彼の発案になる「教会法令の協和」の解釈原則とともに、グラティアヌスによる西欧教会法の統一、およびカノン法学の創始(1140ころ)の先駆ともなった。
[渕 倫彦]