日本大百科全書(ニッポニカ) 「インケルス」の意味・わかりやすい解説
インケルス
いんけるす
Alex Inkeles
(1920―2010)
アメリカの社会学者。コーネル大学卒業後、コロンビア大学で学位を得、ハーバード大学教授、スタンフォード大学教授を歴任。ソ連社会研究の第一人者で、著書に『ソビエトの世論』(1950)、『ソビエト体制はどう機能するか』(1956・共著)、『ソビエトの市民』(1959・共著)、『ソビエト・ロシアにおける社会変動』(1968)などがある。とくに、主任研究員として寄与したハーバード大学ロシア研究所におけるソビエト社会体制研究プロジェクトは、ソ連からの亡命者に対する大規模な面接調査を通して、ソ連の社会構造や社会心理を実証的に解明した画期的な調査研究であった。その後、発展途上国の近代化の研究にも取り組み、『近代への脱皮』(1974・共著)を著し、それを踏まえて現代社会の変動の収斂(しゅうれん)化と多様化の研究をライフワークとしつつ、その研究領域を国民性の国際比較へと展開した。その成果を『国民性――心理的・社会的パースペクティブ』(1997)として出版している。社会学入門書『社会学とは何か』(1964)もある。
[石川晃弘]
『辻村明訳『ソヴェートの世論』(1955/増補版・1960・東京創元社)』