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国民性 こくみんせい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

国民性
こくみんせい

国民に独自な気質性格をいう。歴史や気候,社会構造の差が国民性を生むとする考えは,古くから多くの学者によって述べられてきたが,学問的領域として確立したのは,第2次世界大戦中のことで,敵国である日本人の国民性を研究した R.ベネディクトの『菊と刀』 (1946) はこの方面の古典的著書の一つである。戦後,心理学的手法を用いた「典型的パーソナリティ」分析が開発された。アメリカではこの分析法を用いて,社会成員の多数に現れるパーソナリティ特徴の国民ごとの相違を各国の文化伝統や育児法などと関連させる心理人類学が発達した。

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デジタル大辞泉の解説

こくみん‐せい【国民性】

ある国民に共通してみられる気質や性格。

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世界大百科事典 第2版の解説

こくみんせい【国民性 national character】

ある国家の大多数の成員に,比較的長期にわたって保持されているパーソナリティおよび行動様式の特性をいう。国民性についての関心は国民国家の成立にともなう国民のアイデンティティ形成の必要から生じてきたと思われる。国民性の研究が社会科学,とりわけ文化人類学の一問題領域として定着したのは1940年代以後のことである。この背景には,第2次大戦中の政策決定に際して,敵国,同盟国さらには自国の国民の行動を科学的に理解し,予測する必要が,とりわけアメリカ政府によって注目され,その方法の一つとして文化人類学が取り入れられたことがある。

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大辞林 第三版の解説

こくみんせい【国民性】

価値観・行動様式・気質などに関して、ある国民に共通して見られる特徴。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

国民性
こくみんせい
national character

一つの国家の構成員(国民もしくは民族)に特徴的にみいだされる、持続的な性格特性または独自な生活様式をいう。民族性、民族的性格とよばれることもある。行動の型から推測された、それぞれの国民(民族)に固有な心理的特徴をさしている。[濱口恵俊]

文化とパーソナリティー

一般に、アメリカ人は自由独立の精神に富み、ロシア人は万事にわたって大まかでのっそりしており、イギリス人は法や規則に忠実でフェアプレーを好み、中国人は祖先崇拝と面子(メンツ)を重んずる。そして日本人は、いつも集団になって行動し、皆の前で恥をかくことを恐れる。フランス人が芸術好きなのに対して、ドイツ人は論理一点張りだし、オランダ人は締まり屋だ、ラテン系の民族は陽気で情熱的だ、などと評される。
 しかしこのような記述は、各民族の性格を印象批評的に語っているだけであり、かならずしもそこに科学的な根拠があるわけではない。国民性を科学的に説明するためには、それぞれの国民がどのような文化のなかで生まれ育ったのか、そしてまた、その文化の特徴を反映した形で、いかなる性格が共通に形成されているか、といった点がはっきりつかめていなくてはならない。こうした点を研究する分野は心理人類学psychological anthropologyとよばれている。
 もともと心理人類学は、文化とその成員のパーソナリティーとの相互規定関係を明らかにする学問であるが、この立場から国民性の問題に最初に接近したのは、ベネディクト、マーガレット・ミード、ゴーラーGeoffrey Gorer(1905―85)などのアメリカの文化人類学者であった。もっとも、それは、第二次世界大戦中に、敵国、同盟国、自国の民族的性格をよく知り、戦争遂行を側面から援助しようとする試みとして始まった。ベネディクトの『菊と刀』(1946)はその代表的な成果であった。[濱口恵俊]

ベネディクトによる日本人の国民性

ベネディクトによれば、日本人は矛盾した行動傾向をあわせもっていて、その性格を記述するためには、「しかし、また」を連発しなくてはならないという。日本人は保守的であるとともに新しい生活様式を喜んで受け入れ、傲慢(ごうまん)であると同時に礼儀正しい。『菊と刀』という題名が象徴するように、日本人は、丹精をこめて菊づくりに励むとともに、人を殺す武器である刀をも尊重してきた。そこには審美性と尚武の精神とが共存しているという。
 だがベネディクトは、菊も刀もともに一幅の絵の部分にすぎないとみなしている。相矛盾するかに思われる性格特性も、日本人が状況に応じて柔軟にふるまうからであって、それを許容する一つの文化の型があるとする。彼女は、その型を、欧米の「罪の文化」guilt cultureと対照させて、「恥の文化」shame cultureとよんだ。「罪の文化」では、内面化された罪の意識(良心)をよりどころにして善行がなされ、「恥の文化」においては、人前で失態を演じないようにすることに注意が向けられる。そこでは、「善行に関して外面的な制裁にたよる」ことになり、人の噂(うわさ)や評判の種になったり、笑い物にされることを極力避けようとする傾向が強い。その場合、行動の基準が当人の外側に設定されている。だからこそ日本人には、置かれた状況ごとに、それにうまく対応しようとして、相矛盾する多面的な行動が生まれるのだとする。しかし、行動の基準が外在しているという理由だけで、日本人に自律性が欠けていると考えることは正しくない。
 こうした戦時の国民性研究は、1930年代に盛んだった精神分析学的なパーソナリティー形成論に影響された。たとえば、日本人の強迫神経症的性格が幼少期の厳しい排泄(はいせつ)訓練に由来するというゴーラーの仮説は、幼少期の体験によって「基本的パーソナリティー構造」basic personality structureが決まるとするカーディナーAbram Kardiner(1891―1981)の説によっている。その後ミードは、「国民性」にかえて「文化的性格構造」cultural character structureという新概念を提起した。[濱口恵俊]
『祖父江孝男・我妻洋著『世界の国民性』(1959・講談社) ▽ルース・ベネディクト著、長谷川松治訳『菊と刀』(社会思想社・現代教養文庫)』

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