日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィーランド」の意味・わかりやすい解説
ウィーランド
うぃーらんど
Wieland;or The Transformation, An American Tale
アメリカの作家C・B・ブラウンの小説。1798年刊。宗教的熱情に取りつかれ不可解な焼死をとげた父をもつセオドア・ウィーランドと妹クララの物語。クララが友人に書き記す形をとっている。長じたセオドアは主のない声を聞いて以来、性格の暗さが募って宗教的狂信に陥り、声の示唆を信じて妻と子供たちを殺してしまう。声は腹話術によるもので、声の主カーウィンは悪の意図のなかったことをクララに告白し、彼女が兄の犠牲になるところを救う。迷いから覚(さ)めたセオドアは自殺する。不可解なできごと、不気味な人物、誤解、殺人などが恐怖とサスペンスを生むゴシック小説だが、異常心理を掘り下げた心理小説でもある。
[松山信直]
『志村正雄訳『世界幻想文学大系3 ウィーランド』(1976・国書刊行会)』