うなぎ屋(読み)うなぎや

日本大百科全書(ニッポニカ) 「うなぎ屋」の意味・わかりやすい解説

うなぎ屋
うなぎや / 鰻屋

うなぎの蒲(かば)焼きなどを調理して食べさせる店。うなぎは食品としては古くからあったが、店は都市住民の外食が盛んとなった18世紀にできた。客がきてから、うなぎを裂いて焼いたから、待たされることは普通であり、これは近代の19世紀後半まではそうであった。うなぎ飯(めし)は、江戸では、大きなうなぎ屋では扱わず、中小の店で蒲焼きとともに扱うか、これだけをつくった。上方(かみがた)では、うなぎ飯は、生け簀(す)が他の川魚を兼ねて扱っていた。江戸では丼(どんぶり)、上方では真蒸(まむ)しといっていた。また、店売りのほかに出前もした。江戸では黒塗りの手桶(ておけ)に入れ、大坂では大平椀(ひらわん)に入れて運んだ。のちに、江戸では銅箱懸け子の印籠蓋(いんろうぶた)のものが使われた。さらに、蒲焼きの担い売りもあった。上方では、よばれた所で、うなぎを裂き焼いて売ったが、江戸では自家で焼いたものを岡持ちに入れて街を回った。担い売りはいまはない。

遠藤元男

『喜田川守貞著『類聚近世風俗志(守貞漫稿)』(1934・更生閣書院)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のうなぎ屋の言及

【江戸前】より

…現在では握りずしの種の鮮度を誇示する語として,もっぱらすし屋がこれを用いている。しかし,《物類称呼》(1775)には〈江戸にては,浅草川,深川辺の産を江戸前とよびて賞す,他所より出すを旅うなぎと云〉とあり,《江戸買物独案内》(1824)を見ると,江戸前,江戸名物などととなえているのはすべてウナギ屋で,すし屋はほとんどが御膳と称している。ちなみに,握りずしは文政年間(1818‐30)ころ江戸両国の与兵衛ずしが売り始めたもので,その人気が高まるにつれ,ウナギ屋にとってかわってすし屋が江戸前を称するようになったものである。…

※「うなぎ屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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