日本大百科全書(ニッポニカ) 「うわばみ」の意味・わかりやすい解説
うわばみ
うわばみ / 蟒蛇
python
一般に大蛇とよばれる大形のヘビの、古くからの俗称。とくに爬虫(はちゅう)綱有鱗(ゆうりん)目ボア科のヘビをさす。日本各地には、人を飲み込むほどの大蛇にまつわる俗説があるが、実際には南西諸島を含むわが国に自然分布するヘビの最大種はアオダイショウElaphe climacophoraで、全長1.5~2.5メートル、まれに3メートルほどに達するにすぎない。全長5メートルを超える王蛇類(おうだるい)(ニシキヘビ属)のなかで、日本にもっとも近い地域にみられるのは、中国南部、フィリピンを東限とする、全長4~6メートルのインドシナニシキヘビPython molurus birittatusであり、ほかはすべて熱帯地方に分布している。最大記録は東南アジア産のアミメニシキヘビP. reticulatusの9.9メートルで、ボア亜科で熱帯アメリカ産のアナコンダEunectes murinusもほぼ同大に達する。
日本では八岐大蛇(やまたのおろち)や安珍清姫(あんちんきよひめ)の伝説をはじめ、柳田国男(やなぎたくにお)の「蛇の息子」の物語など大蛇にまつわる民話が少なくない。大蛇を神格化する例は洋の東西を問わず多く、ギリシア神話にも、医学の祖アスクレピオスのシンボルである大蛇や、海神ポセイドンが送った2匹の大蛇に締め殺されるラオコーンの物語など、善と悪とのシンボルとして登場する。
[松井孝爾]