ラオコーン

デジタル大辞泉 「ラオコーン」の意味・読み・例文・類語

ラオコーン

Laokoōnギリシャ神話で、トロイアアポロン神殿の祭司。トロイア戦争末期に、ギリシャの兵士が体内に潜む巨大な木馬を怪しみ、これを城内に引き入れることに反対した。このため女神アテナの怒りに触れ、二人の息子もろとも大蛇に絞め殺された。その臨終を扱ったバチカン美術館蔵の大理石群像はヘレニズム期の代表的彫刻。
《原題、〈ドイツ〉Laokoonレッシングの著作。1766年刊。副題「絵画と詩の境界について」。ギリシャ彫刻のラオコーン群像を題材に、造形美術と文学との差異を論じた美学論文。

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精選版 日本国語大辞典 「ラオコーン」の意味・読み・例文・類語

ラオコーン

  1. ( [ギリシア語] Laokoōn )
  2. [ 一 ] ギリシア神話中のトロイの祭司。トロイ戦争のときギリシア軍がおき去った木馬の引き入れに反対したため、アテナ女神が送った大海蛇によって二人の息子とともに締め殺された。
  3. [ 二 ] [ 一 ]を題材としたギリシアの群像彫刻。作者はアゲサンドロス・ポリュドロス・アテノドロスの三人と推定される。成立年不詳。一五〇六年にローマで発見され、後世の美術に大きな影響を与えた。現在、バチカン市国のバチカン美術館にある。
  4. [ 三 ] ( 原題[ドイツ語] Laokoon ) 評論。レッシング著。一七六六年成立。彫刻ラオコーン群像を手がかりに、ギリシアの彫刻とローマの詩とを比較検討しながら、文学と造形美術の相違とそれぞれの本質を明らかにした。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラオコーン」の意味・わかりやすい解説

ラオコーン(ギリシア神話)
らおこーん
Laokoon

ギリシア神話でトロヤアポロン(またはポセイドン)の神官。神の戒めを無視して妻帯したため、あるいは神像の前で妻と交わったため、アポロンの怒りを買う。トロヤ戦争の10年目、ギリシア軍は勇士たちを内部に潜ませた巨大な木馬を残し、トロヤから撤退すると見せかけた。そのときトロヤ人のある者は、城壁を壊してでもこれを城内に運び入れてアテネ神に奉献するべきであると主張し、ある者は木馬の内部には奸計(かんけい)が隠されているので、焼き捨てるか断崖から海に投じるべきだと主張した。ラオコーンは後者の説で、彼は木馬の腹に槍(やり)を突き刺したため、これを怒ったアテネ、あるいはかつての涜神(とくしん)行為を罰しようとしたアポロンにより、2匹の海蛇が送り込まれて、息子たちが、ついでラオコーン自身が絞め殺された。これを見てラオコーンの説が偽りだと信じたトロヤ人は、木馬を城内に引き入れたため滅ぼされた。

 バチカン美術館にある有名な『ラオコーン群像』の彫刻は、紀元前1世紀のロドスの彫刻家、アゲサンドロス、ポリドロス、アテノドロスの合作である。またレッシングの評論『ラオコーン』(1766)は、この群像から出発して造形芸術言語芸術の特性と限界を論じ尽くしたものである。

[中務哲郎]


ラオコーン(レッシングの美学論文)
らおこーん
Laokoon

ドイツの批評家劇作家レッシングの美学論文。1766年刊。「第一部」とあるが、第二部以下は書かれることなく終わった。副題が「絵画と詩の境界について」となっていることからもわかるように、バチカン美術館所蔵の『ラオコーン群像』の解釈手掛りとして、空間的・並列的芸術である造形美術と時間的・継起的芸術である文学の、題材の選択ならびに扱い方における差を論じたもの。著者の思い違いや時代の制約からくる誤りはみられるが、それまであいまいだった両芸術の差を明確にした功績は大きい。読者をもともに考えさせずにはおかない明晰(めいせき)な文体は、今日なお清新な魅力を保っている。

[濱川祥枝]

『斎藤栄治訳『ラオコオン』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラオコーン」の意味・わかりやすい解説

ラオコーン
Laokoōn

ギリシア神話の人物。トロイ王プリアモスの義兄弟アンテノルの息子で,トロイのアポロン神殿の祭司となり,アンチオペと結婚して2人の息子をもうけたが,妻と神像の前で交合する不敬を働き,神を怒らせた。トロイ戦争の終りに,ギリシア軍が勇士たちの隠れた木馬をあとに残して,海に出たとき,カッサンドラとともにこの木馬を城内に引入れることに反対したが,そのあとでポセイドンに雄牛を犠牲に捧げようとしていると,2頭の巨大なへびが海から出てきて,彼の2人の息子に巻きつき,助けようとしたラオコーンも一緒に締め殺されてしまった。これはアポロンがラオコーンの過去の不敬を罰したものだが,そうとは知らぬトロイ人たちは,木馬を市内に入れるのに反対した彼の態度が神罰を受けたものと思い込み,木馬を城内に引入れた。その結果トロイは,その夜のうちにギリシア軍に攻略され,滅亡することになったという。

ラオコーン
Laokoon, oder über die Grenzen der Malerei und Poesie

ドイツの劇作家,批評家 G.E.レッシングの芸術論。 1766年刊。副題「絵画と文学との境界」。ギリシア彫刻の『ラオコーン群像』 (バチカン美術館) とウェルギリウスの『アエネイス』の同じ題材を扱った部分との比較を通じて,ウィンケルマンの説を批判し,空間芸術としての絵画と時間芸術としての文学との相違を説いている。ヘルダーらの反論を招いたが,ウィーラント,ゲーテらに多大の影響を与えた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ラオコーン」の解説

ラオコーン
Laokoon

ギリシア神話中の人物で,トロヤのアポロン神の神官
アテナ神の怒りにふれ,ふたりの子とともに大蛇に殺される。これを題材とした前1世紀の彫刻はヘレニズム美術の代表作として有名。

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