日本大百科全書(ニッポニカ) 「エウェ」の意味・わかりやすい解説
エウェ
えうぇ
Ewe
西アフリカ、ガーナおよびトーゴに居住する先住民集団。1970年代の調査によれば、人口は約100万。言語はニジェール・コンゴ大語族のうちのクワ語族に属する。生業は、海岸地帯では主として漁業であり、内陸部では商品作物としてのカカオ栽培が中心となっている。かつて社会の中心をなしていたのは、強力な父系リネージ(系譜関係のはっきりしている単系血縁集団)であり、これが生活の大きな部分を統轄していた。リネージの長老は、権威の象徴である椅子(いす)をもち、各家族の長によって構成される顧問会議に補佐されていた。村落レベルにおいては、村の創設者のリネージの長老が村長となり権力を握っていた。歴史上単一の王国を形成したことはなく、10の首長国に分かれていた。植民地時代に奴隷貿易に関与し、商品作物栽培が社会経済生活を改変した結果、リネージの統制力や父親の権限は弱まってしまっている。トーゴ、ガーナの2か国に居住地が分かれていて、両国の政治に微妙な影響を及ぼしている。
[木村秀雄]