日本大百科全書(ニッポニカ) 「えじこ」の意味・わかりやすい解説
えじこ
乳児の時代に使われる育児用具。藁(わら)で浅い桶(おけ)の形に編んだ物。おもに東北地方など寒い地方で用いられる。ツグラ、ツブラ、イズミ、イズメ、フゴ、イジコ、エジコなど方言も種々ある。東京などでは同じ形のものを、おひつ入れとして用い、ご飯の保温用に使っていた。生後3日から7日目ぐらいで入れ始め、ふとんを入れ、底には襁褓(むつき)がわりの布を敷く。布の乏しい時代には、軟らかな海藻や、川藻の干したものを使った。人手の少ない農山村では乳児を入れて野良(のら)に持って行ったり、家に置いていったりした。この具に関する禁忌、俗信も多く、つくるときはかならず1日で編み上げないと子供の育ちが悪いなどという。これを空(から)のままで持ち歩くことは嫌い、やむをえない場合には、かならず小石を入れておかなくてはならないといわれている。
[丸山久子]