エベン族(読み)エベンぞく(その他表記)Eveny

改訂新版 世界大百科事典 「エベン族」の意味・わかりやすい解説

エベン族 (エベンぞく)
Eveny

シベリア北東部のマガダン地区,サハ(ヤクート)共和国の北部(レナ川以東)に居住する少数民族。人口1万7000(1989)。旧称はラムート族。彼らの用いるツングース諸語の一つであるエベン語ラムート語)はエベンキ語ネギダール語(エルカンベイエ語)ともっとも近い関係にあり,エベンキ族と類似した文化を保持していた。伝統的には内陸部では狩猟生業とする移動生活が営まれていたが,オホーツク海沿岸では定住的な漁労,海獣狩猟が行われていた。シベリアの多くの原住民の場合と同じように19世紀には形式的にロシア正教徒とされていたが,シャマニズムをはじめ独自の信仰を根強くもっていた。十月革命後は定住生活に移り,コルホーズに所属して牧畜,毛皮獣飼育,農業に従事している。1931年ラテン文字を基礎としたエベン語の文字がつくられたが,36年にロシア文字に基づいた文字に改められた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エベン族」の意味・わかりやすい解説

エベン族
エベンぞく
Even

北アジアのヤクート地方,チュクチ半島の一部および北東部のオホーツク海沿岸に居住する先住民。旧称ラムート族。人口約1万 7200。言語,文化のうえではエベンキ族と密接な関係をもっている。生業は北方に住むエベン族では狩猟とトナカイ飼育であり,運搬手段としてトナカイぞりが用いられたが,オホーツク海沿岸のエベン族では半定住生活,漁労,海獣狩猟が行われ,ここでは運搬手段として犬ぞりが使われた。ソ連時代にはコルホーズに組込まれていた。

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世界大百科事典(旧版)内のエベン族の言及

【ソビエト連邦】より

…上記のハンティ,マンシ,ネネツもその一部であるが,大部分はツングース語系諸族と旧シベリア諸族(パレオアジアート,古アジア諸族とも呼ばれる)である。前者には西シベリアからオホーツク海沿岸に分布するエベンキ族,アムール川下流,サハリン,沿海州に分布するエベン族,ナナイ族,ウリチ族,ウイルタ族(旧称オロッコ族),オロチ族などの民族が属し,後者にはコリヤーク族,チュクチ族,イテリメン族(旧称カムチャダール族),ニブヒ族(旧称ギリヤーク族),ユカギール族,ケート族などの民族が属する。 インド・ヨーロッパ語族に属する言語をもつ民族には,前記のロシア人,ウクライナ人,白ロシア人(ベラルーシ人)のほかに,バルト海沿岸にリトアニア人とラトビア人,ウクライナの南に,ルーマニア人と言語・文化の面で近いモルダビア(モルドバ)人がいる。…

【ツングース語系諸族】より

…狭義のツングース族)はエニセイ川西岸からオホーツク海岸に及ぶ東シベリア全域に広範に分布し,その生業は各地の自然環境や文化的背景,歴史的事情を反映して地域的差異を示している(狩猟採集,トナカイ飼養,農牧畜など)。エベンキ族と言語・文化の上で近い関係にあるエベン族はシベリア北東部(レナ川以東オホーツク海沿岸まで)に居住し,狩猟採集,トナカイ飼養のほか,沿岸地域では定住的な海獣狩猟に携わった。この2民族以外はロシアの極東地域(アムール川流域,沿海州,サハリン)に古くから居住してきた民族である。…

※「エベン族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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