改訂新版 世界大百科事典 「エルテベレ文化」の意味・わかりやすい解説
エルテベレ文化 (エルテベレぶんか)
バルト海西部,デンマークを中心とする石器時代文化。炭素14法による測定年代は前3800-前3200年。当時,中部ヨーロッパは,すでに穀物栽培・家畜飼養・土器使用の新石器時代に入っていたが,デンマークでは漁労(タラなど),狩猟(アザラシ,アカシカ,イノシシ,カモ),採集(貝,木の実)に依存しており,中石器時代文化と理解されている。ただし新しい段階では農耕文化と交渉をもち,煮炊き用の尖底土器と土製ランプを使うにいたった。この文化を特徴づける貝塚はカキを主体とし,海岸線に平行して長い(ユトランド半島北部のエルテベレErtebølle貝塚は141m×20m)。自然遺物は春の獲物が集中し,季節的な居住をしめす。貝層中には石塊をあつめた炉をしばしば見る。フリント製の剝片石器(石斧,逆台形石鏃)が栄える。近年,墓地(22体,伸展葬)も見いだされた。小児の死亡率が高い。食人の風もあったという。
執筆者:佐原 眞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報