改訂新版 世界大百科事典 「エレクトロスラグ溶解法」の意味・わかりやすい解説
エレクトロスラグ溶解法 (エレクトロスラグようかいほう)
electro slag remelting
ESR法ともいう。1937年にアメリカでホプキンズ法として開発され,その後ソ連で発展し,日本では70年ころから急速に採用されるようになった鋼の精錬法。その原理は,図に示すように,溶融スラグの電気抵抗熱によって溶鋼原材料である消耗電極を溶解し,スラグ中を滴下沈降した溶鋼を水冷鋳型内で連続的に凝固させていくことにある。真空排気系がないため炉体が簡単でかつ操業も比較的容易であるため,高級鋼ばかりでなく大型鍛鋼品にも適用され,200t程度の大型炉も稼働するようになっている。スラグ組成はCaF2にAl2O3,CaOを加えた二元,三元系が主体である。品質的には次のような特徴をもつ。(1)積層凝固であるため組織が緻密で偏析が少ない。(2)精錬作用により硫黄,酸素が少なく清浄である。(3)機械的性質が改善され,とくに靱性の向上,方向性の減少,疲労強度の向上が著しい。(4)表面肌が良好で手入れの必要がなく,歩留りがよい。(5)鋼塊の大きさや形状に対する制約が少なく,広幅スラブや中空鋼塊など任意の形状の製品が得られる。
執筆者:宮下 芳雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報