改訂新版 世界大百科事典 「エレラ様式」の意味・わかりやすい解説
エレラ様式 (エレラようしき)
Estilo Herreriano
スペイン・ルネサンス建築の代表作エル・エスコリアル修道院・離宮の建築家フアン・デ・エレラJuan de Herrera(1530-97)にちなんだ様式名。対抗宗教改革の推進者フェリペ2世のいう〈単純な形態,厳正な総体,気負いなき気品,虚飾なき威厳〉を実現した様式である。エル・エスコリアルにみるような左右対称の構成,装飾的な要素の排除,長方形を主体とした開口部など純然たる構造そのものを旨とする峻厳な様式。この様式の確立者エレラははじめ哲学を専攻したが,イタリアへ出征し,また皇太子時代のフェリペ2世の随員としてブリュッセルに滞在,ここで数学と建築を学んだという。ほかにセビリャのロンハ,トレドの市庁舎など公共建築の計画を手がけており,エレラ様式は公式様式として一時代を築いた。
執筆者:神吉 敬三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報