オイノコエ(読み)おいのこえ(英語表記)oinochoe

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オイノコエ」の意味・わかりやすい解説

オイノコエ
おいのこえ
oinochoe

ギリシア陶器の一種。「酒注ぎ」の意。クラテルからぶどう酒をくんで杯に注ぐための器。円形もしくは三葉形に開いた口縁部と膨らんだ胴部、それに口縁部から突き出て頸部(けいぶ)もしくは胴部に至る大きな垂直把手(とって)をもつ。初期ギリシア時代から末期にかけて広く用いられており、それだけに器形も多様であるが、基本的には頸部がやや細くなり肩部が大きく広がっているものと、頸部から胴部まで一連曲線を示すものの2種がある。このほか胴部が人面をかたどったもの、レキトスのように細い筒形のものなど若干の変形がある。

[前田正明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オイノコエ」の意味・わかりやすい解説

オイノコエ
oinochoe

ギリシアの壺の一種。「酒つぎ」の意で,ぶどう酒をクラテル (酒と水を混ぜるための大型の鉢) から杯につぐための器。口縁部は円形もしくは三葉形となり,垂直の取手がつく。

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世界大百科事典(旧版)内のオイノコエの言及

【ギリシア美術】より

…これらのうち,アンフォラ,ペリケー,スタムノスは主としてブドウ酒,油,はちみつ,小麦などの貯蔵用の器,クラテル,プシュクテル,レベス,カンタロス,ディノスは酒宴用,キュリクス,スキュフォスは飲酒用の盃,小さなレキュトス,アリュバロス,アラバストロンは香油入れ,ただし前5世紀以降の白地レキュトスは葬祭用にのみ供せられた。口縁部が三葉形をなすオイノコエは水さし(または酒つぎ),垂直あるいは水平の把手のあるヒュドリアは婦人が泉から水を汲むための水甕,長頸のルトロフォロスとレベス・ガミコスは婚礼の花嫁用,円筒形の蓋付きのピュクシスは婦人用の化粧箱,そのほかに皿,鉢,碗などがあった(図4)。
[技法]
 成形はすべて轆轤(ろくろ)による。…

※「オイノコエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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