日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオクチホシエソ」の意味・わかりやすい解説
オオクチホシエソ
おおくちほしえそ / 大口星狗母魚
大口星鮧
大口星鱛
stoplight loosejaw
[学] Malacosteus niger
硬骨魚綱ワニトカゲギス目ホウキボシエソ科に属する海水魚。岩手県沖、熊野灘(くまのなだ)、小笠原(おがさわら)諸島海域、沖縄舟状海盆(しゅうじょうかいぼん)(トラフ)、九州・パラオ海嶺(かいれい)、南シナ海など太平洋、インド洋、大西洋の熱帯から温帯海域に分布する。体はやや伸長し、側扁(そくへん)する。体は頭の後端付近でもっとも高く、体長は体高のおよそ7倍。鰓孔(さいこう)は上端から下端まで斜め後方に大きく開く。吻(ふん)は丸くてきわめて短い。目は頭の前端に位置し、眼径は吻長より著しく長い。口はきわめて大きく、後方に向かって伸長し、上下両顎(りょうがく)の長さはおよそ頭長に等しい。下顎の腹面(口床)には皮も肉もなく骨がむき出しになっており、下顎の前部の骨と舌の基部付近(基舌骨)が肉質の紐(ひも)でつながる。下顎には30~33本の歯があり、そのうち4~5本は牙(きば)状で長く、上顎の歯よりも著しく大きい。目の中央下の下顎の牙状歯が最長で、その長さは眼径のおよそ2分の1。下顎にひげはない。目の下に、およそ眼径に等しい長さの、前部でとがり後部で丸い、楕円(だえん)形の大きい付属発光器(雌雄ともに長径は上顎長の15.9~27.2%)と、目の後ろ下方に小さい眼後発光器(雄では上顎長の5.8~11.8%、雌では2.8~8.1%)がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨には歯がない。鰓耙(さいは)は痕跡(こんせき)的か、または完全にない。鱗(うろこ)はなく、皮膚はきわめてはがれやすい。頭と体に微小な発光器があるが、列状には並んでいない。背びれと臀(しり)びれは体の後端にあり、臀びれは背びれ第3軟条下から始まる。両ひれは皮膚で覆われる。背びれは14~20軟条、臀びれは17~23軟条。脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)はない。胸びれは3~5軟条。腹びれは6軟条からなり、体の中央より後方に位置し、やや伸長する。体と各ひれは一様に真黒色。下顎と基舌骨をつなぐ紐は白い。最大体長は約26センチメートルになる。水深約500メートルに生息し、まれに表層へ浮上すると考えられているが、通常は日周鉛直移動をしない。捕食時は中深層で付属発光器から発する長い波長の赤色系の光を用いて、コペポーダや小さい魚類のハダカイワシ類やヨコエソ類などの餌(じ)生物を探すと考えられている。獲物が口に入ると、その刺激で下顎についている紐が引かれて口が閉まり、下顎の鋭い歯でとらえる。口床に皮や肉がないのは、水の抵抗を少なくし、また獲物を飲み込みやすくするためと考えられている。
オオクチホシエソ属の本種は、胸びれがあること、背びれと臀びれが皮膚で覆われることなどで、アゴヌケホシエソ属のクマドリホシエソAristostomias polydactylusに似るが、クマドリホシエソには下顎にひげがあること、胸びれが10~17軟条であることなどで、本種と容易に区別できる。ホウキボシエソ科をワニトカゲギス科の亜科とする研究者もいる。
[尼岡邦夫 2026年2月13日]


