改訂新版 世界大百科事典 「オオボタンヤシ」の意味・わかりやすい解説
オオボタンヤシ
Caroline ivory nut palm
Coelococcus amicarum Warb.
ミクロネシアに自生するヤシ科の高木で,通常谷間の水辺に生える。幹は高さ20m,直径60~90cmに達し,表面は葉柄の基部を残存し,粗い。葉は羽状全裂で長さ約3m。羽片は多数で披針形,長さ約45cmで下垂性。葉鞘(ようしよう)基部は粗大で外面にサゴヤシに見るような不規則の線状の突起があり,少数の長いとげを有する。肉穂花序は葉腋(ようえき)より抽出し,長さ2~3m。花は雌雄同株。果実は球形,径5~9cm,外面は小さい光沢のある鱗片で包まれている。種子は1個で大部分は角質の胚乳からなる。ミクロネシアのポナペ島,コシャエ島の原産でフィリピンでは造林されている。種子の胚乳は植物象牙の原料で,主としてボタンの製造に用いられ,指輪,彫刻,ろくろ細工などにも利用される。葉は屋根ふき用になり,幹の髄からデンプンがとれる。なお植物象牙を産するものに南アメリカ産のブラジルゾウゲヤシPhytelophas marcrocarpa R.et P.や西アフリカ産のRhaphia vinifera Beauv.などがあり,一般にゾウゲヤシ(英名ivory nut)の名で呼ばれている。
執筆者:初島 住彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報