改訂新版 世界大百科事典 「オキチモズク」の意味・わかりやすい解説
オキチモズク
Nemalionopsis turtuosa Yoneda et Yagi
きれいな流水中に生育し,大小の側枝を出す柔軟で粘滑な糸状のベニモズク科の淡水産紅藻類。太さ1mm弱の円柱状の主軸から大小の側枝を出し,全長10~40cmになる。体の中心部は髄部,縁辺部は皮層部で,髄部は細胞糸の束,皮層部はこれよりほぼ直角にのびる分枝した同化糸からできている。無性生殖のみが知られ,同化糸の先端にできた単胞子が放出されて発芽すると,親と同じ体になる。四国および九州地方の流出水中に生育する。和名は松山市の〈おきち泉〉という小さな池から流出する小川で最初に発見されたことによる。なお,その生育場所は国の天然記念物に指定されている。近似の淡水藻で,同様に国の天然記念物(熊本県菊池川,鹿児島県川内川)となっているチスジノリThorea okadai Yamadaでは同化糸がほとんど分枝しないことで区別できる。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報