改訂新版 世界大百科事典 「オセット人」の意味・わかりやすい解説
オセット人 (オセットじん)
Osetiny
カフカス中央部に住む民族で,ロシア連邦の北オセティア共和国およびグルジア共和国の南オセティア自治州を構成する民族。ロシア語ではオセティン,自称はイロン,ディゴロン。人口59万8000(1989)。イラン語系オセット語を用い,言語的にはスキタイ,サルマート,アラン等諸民族の後裔であるが,文化や人種形質の面では周囲のカフカス系諸民族から強い影響を受けた。13世紀にはクマ川流域に国家を建てたが,モンゴル人の攻撃にあって首都マガスは灰燼に帰した。中国に移住して元朝に仕える者もあったが,キプチャク・ハーン国の圧迫を受け,北カフカスの豊かな草原から山地へと移動し北オセティアが成立,一部は現在の南オセティアに進んだ。北オセティアは四つの大種族,南は群小の村落共同体からなっていたが民族は統一されず,それぞれカバルダ人,グルジア人貴族の支配下にあった。1774年ロシアに併合された。キリスト教,イスラム教化後もそれ以前の古い信仰の要素が強く残存する。英雄叙事詩《ナルト》(ナルト叙事詩)を口承している。
→オセット語
執筆者:北川 誠一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報