改訂新版 世界大百科事典 の解説
オックスフォード経済調査 (オックスフォードけいざいちょうさ)
1930年代は,経済学の諸仮定にさまざまな疑問が提出された時代であった。こうした流れのなかでオックスフォード大学につくられた経済調査グループは,〈各市場の価格は弾力的か〉について実態調査を行った。利子率や為替レートに関する調査のほか,産業組織に関しては,限界費用にもとづく利潤の最大化という行動のルールについて,はたしてそれが実証的に妥当するかについて,P.W.アンドルーズを中心として企業行動の実態調査が行われた。ここで一つ明らかとなったのは,ホールR.L.HallおよびヒッチCharles J.Hitchによって報告された,マーク・アップ率(目標収益率)を考慮した平均費用にもとづく価格設定基準であった。これは,伝統的な限界費用主義の考え方を否定するものとして,大きな論争を生んだ。この考え方はフル・コスト原理と呼ばれ,その後も寡占的産業における価格行動の一つの有力な説明原理とされている。しかし,この原理が限界主義的な考え方を否定することになるか否かは,いまだに議論のあるところである。
→価格形成
執筆者:南部 鶴彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報