生産量を1単位増加させることに伴う,総費用の増加分をいう。これに対し,総費用を生産量で割ったものは平均費用とよばれる。短期においては固定費用は生産量の変化にかかわらず一定であるから,限界費用は,生産量を1単位増加させるのに必要な追加的な原材料費や賃金分すなわち限界可変費用と同じことになる。限界費用は通常,生産量の少ない領域では生産量を増加させるにともなって減少し,やがて生産量がある領域まで達すると増加する,というU字形のカーブを描く。限界費用は,企業の意思決定および社会の効率的な資源配分の決定に重要な役割をはたす。企業が利潤を最大にするよう行動するならば,限界費用と限界収入(販売量をもう1単位増加させた場合の総収入の増加分)が等しくなるように,生産量を決定すればよい。限界費用と限界収入が等しくない場合には,生産量を増減することによって利潤の増加(あるいは損失の減少)をはかることができるので,利潤は最大になっておらず,それは両者が等しくなる生産量においてのみ最大になっている。また社会的にみると,ある財の生産量は,その財の生産量をもう1単位ふやすことに必要な費用(限界費用)と,その財をもう1単位よけい消費することに伴う社会の満足の程度の増加分(限界効用)が等しくなる点で決定されたとき,社会全体の満足(厚生)は最大になる。このような望ましい状態は需要と供給の一致する点であり,これは市場機構によって自動的に達成される。
執筆者:後藤 晃
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[民間企業の価格形成]
利潤を目的とした民間企業のおもな価格形成原理として,限界原理とフルコスト原理がある。限界原理marginal principleというのは,企業は生産の追加的増加による収入の増加分(限界収入)が費用の増加分(限界費用)と等しくなる数量で生産を行うことによって利潤の最大化を図れる,というものである。限界収入が限界費用を上まわっている状態にあれば,それより生産を拡大することにより企業の獲得する利潤は増大し,逆の場合には減少する。…
…つまり,総費用の変化はこの可変費用の変化によるものである。 ある産出量から1単位だけ産出量を増加させたときの総費用の増加分を限界費用という。図1において,限界費用は総費用曲線CC′の各点における接線のこう配で表される。…
※「限界費用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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