日本大百科全書(ニッポニカ) 「カイ諸島民」の意味・わかりやすい解説
カイ諸島民
かいしょとうみん
Kai Islanders
インドネシア東部、モルッカ諸島の中にあるカイ諸島の住民。他のモルッカ諸島の先住民と同様、アルフール(森の人)とよばれる。19世紀末の記録によれば、住民はすべて色黒の典型的なパプア系であり、言語はオーストロネシア語系であった。その後、西方のインドネシア中心部からマレー系移住者が流入し、両者間の混血の割合が高まった。人口は1956年の統計で約3万7000人。宣教師の活動により、一時、住民のほとんどがキリスト教化されたが、移住者の増加とともにイスラム化が進んでいる。おもな食糧源はサゴヤシであるが、料理用バナナなども栽培している。狩猟、漁労も重要な生業である。土地は、伝統的に共同体に所属しており、各個人が耕作権を保持している。移住者は島民と結婚しない限り、土地に対する権利を有することはなかった。政治体制は民主的で、強力な政治権力者は出現しなかった。
[木村秀雄]