改訂新版 世界大百科事典 「カッシウスディオ」の意味・わかりやすい解説
カッシウス・ディオ
Cassius Dio Cocceianus
生没年:150ころ-235
ローマ帝政期の歴史家。小アジアのニカエアに生まれ,コンモドゥス帝治下に元老院議員となる。セウェルス朝期には,194年法務官(プラエトル)に就任し,205年および229年に執政官(コンスル)職にあった。その間,属州アフリカの総督,属州ダルマティアおよびパンノニアの知事を務めた。彼の執筆活動はギリシア語でなされ,セプティミウス・セウェルス帝治世に同帝の夢と前兆を扱った作品に始まった。その後,193年の内乱を扱った作品を執筆中に計画を拡大して建国から229年までを対象とする《ローマ史》の著述に心血を注いだ。全80巻のうち大部分が現存する第36~60巻は,前68年から後47年までのできごとを叙述している。失われた諸巻については,後代の著作家による伝承の抜粋や要約によって補われている。彼自身の行政経歴のために叙述は政治史に集中し,君主政の理念が反映しているが,同時代史に関して史料的価値は高い。
執筆者:本村 凌二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報