改訂新版 世界大百科事典 「カルゴ」の意味・わかりやすい解説
カルゴ
cargo
中南米の原住民村落の自治的な行政・祭祀組織のポストの総称。男子は所定のポストを占めることで一人前の村民としての資格を得ていく。行政上の低いカルゴの役は村役の使い走りから始まり,祭祀では教会(司祭)の雑用が主である。一人の男は行政・祭祀両方のカルゴの間を階梯的に上昇していき,すべての役を務め上げた者が長老格として尊敬を集め,村の夫役を免除される。カルゴは金銭上の出費と時間的負担に代表される一方的奉仕にその特徴があり,ことに村のさまざまな祭りでの酒宴や花火・楽隊などの費用を負担する。このようにしてカルゴ・システムは,財の偏重によって起こる村内の不平不満による社会的緊張の緩和に役立っているほか,農耕原住民の地域社会と国家の間をつなぐ役割をにない,また祭祀面では祭りの執行を通じて,彼らの閉ざされた狭い宗教世界をカトリック教会へとつないでいく。しかし中米のグアテマラ,メキシコの高地農村地帯では,現在でも行政・祭祀の両機能を果たしているが,南米のアンデス高地の農村地帯では,行政上のカルゴは消滅の一途にあり,祭祀上のカルゴが祭祀の当番という形で存続しているのみである。
→宮座
執筆者:佐藤 信行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報