日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルズー」の意味・わかりやすい解説
カルズー
かるずー
Jean Carzou
(1907―2000)
フランスの画家。シリアのアレッポに生まれる。パリで修業し、1924年に同地に定住する。1939年以来アンデパンダン展など各種の展覧会に出品。1953年にベネチア風景の展覧会やパリ・オペラ座でのバレエ『ジゼル』のためのデザインで大きな成功を収める。1954年にイル・ド・フランス大賞受賞。その後、レジオン・ドヌール勲章を受章、1978年にはフランス・アカデミーの会員に選ばれる。優美であるとともに鋭く精力的な線を主要な表現手段とする彼の芸術は、幻想的なものと具体的なもの、現実と想像力が融合して、繊細で鋭敏な詩情をたたえている。1956年から1957年の「黙示録」の連作には、核プラント、ロボット文明、森林の消滅、汚染などが発想源となり、人間を奴隷化しその魂を破壊する現代文明の荒涼とした姿が描き出されている。これが一つの土台となって、1990年代初めに南仏マノスクの修道院礼拝堂の670平方メートルを超える壁面に「黙示録」の壁画を制作。1992年から同礼拝堂はカルズーの美術館として公開されている。
[大森達次]