アレッポ(読み)あれっぽ(英語表記)Aleppo

翻訳|Aleppo

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アレッポ」の意味・わかりやすい解説

アレッポ
Aleppo

アラブ語でハラブ Halab。シリア北西部,ハラブ県の県都。クワイク川沿いの石灰岩の丘 (390m) に位置する。内陸性気候で,夏季最高気温は 43~46℃。メソポタミア,小アジア,エジプトの文明の影響を受けて早くから都市国家が誕生。セレウコス朝治下で発展した。その後キリスト教が広まり4世紀まで司教座を設置。 637年アラブが侵入してからはウマイヤ朝の都市として繁栄。やがてセルジューク・トルコ,十字軍,アイユーブ朝マムルーク朝などの支配を受け,1516年オスマン帝国に征服され,約 400年間支配された。第2次世界大戦後,旧市街の北方および西方に新市街が拡大し,シリア大学の分校,ウガリト遺跡やマリ遺跡のコレクションで有名な新博物館もある。中東随一のスーク (市場) のハーンアルサブーン,ハーンアルワジールが続き,石造りのキャラバンサライ,商店,中世の学校,数多くのモスクなどがある旧市街は,1986年世界遺産文化遺産に登録。特にウマイヤ大モスク (715) は最大の規模を有し,7世紀の創建になるトゥータモスクは最古のもの。南方にはシリア現存の中世建築のなかで最も美しいといわれる神学校フィルダウス (1235) がある。絹織物取引の中心地で,主要工業は絹織物,綿捺染のほか,羊毛皮革セメント繰綿など。周辺農作物の大集散地であり,牧畜も盛ん。人口 144万 5000 (1992推計) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アレッポ」の意味・わかりやすい解説

アレッポ
あれっぽ
Aleppo

シリア北部、地中海ユーフラテス川の間にある同国第二の都市。人口193万3700(2003推計)。標高400メートルの内陸高原にあり、気候は大陸性であるが、地中海の影響を受けて冬に降雨がある(年降水量400ミリメートル)。アラビア名をハラブalabといい、すでにヒッタイト期(前2000~前1200)の碑文のなかにその名が刻まれている。海洋民族フェニキア人とメソポタミアの内陸民族が出会う場所で、東西交通の要衝として古くから栄えた。またそのために、中近東を支配下に置こうとする諸勢力の係争地となってきた。16世紀のオスマン・トルコ治下では中近東最大の商業都市として繁栄した。北部シリアの経済の中心で、小麦、大麦、綿花、ゴマ、オリーブ、果実、羊毛などの農産物の集散地である。また絹や綿織物、皮革品など伝統産業のほかに、食料品、紡績、セメントなどの近代工業も発達している。地中海沿岸の港湾都市ラタキア、首都ダマスカス方面やトルコ、イラク方面へ行く鉄道の分岐点である。市内には中世のアラブ式城砦(じょうさい)、スーク(大市場)、国立博物館などがある。1986年に「古都アレッポ」として世界遺産の文化遺産(世界文化遺産)に登録されたが、内戦により甚大な被害を受けたとして、2013年には危機遺産リスト入りしている。

[原 隆一]

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