日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルボ条項」の意味・わかりやすい解説
カルボ条項
かるぼじょうこう
Calvo clause
国家と外国人との契約に挿入されることのある規定で、その契約から生じる紛争は、もっぱら当該国家の国内的救済手続によって解決するものとし、外国人が本国政府の外交的保護を求めないことを内容とする。アルゼンチンの国際法学者カルボが発案したのでこの名をもち、外国人が自国民より有利な特権的地位にたつことは許されないとする主張が、その基礎にある。19世紀から20世紀の初めにかけて、ヨーロッパ諸国やアメリカが、自国民に対する契約上の債務の不履行を理由に、しばしばラテンアメリカ諸国に干渉した。これに対抗するため、カルボ条項が取り入れられたが、最近わが国の会社が新興諸国との間に結ぶ契約中にも、同様の規定がみられる。カルボ条項は、国家の外交的保護権を奪うものであるから無効であるとするのが欧米の通説であるが、部分的にその効力を認めた仲裁裁判例もある。
[太寿堂鼎]