改訂新版 世界大百科事典 「カロリーナ刑事法典」の意味・わかりやすい解説
カロリーナ刑事法典 (カロリーナけいじほうてん)
Die peinliche Gerichtsordnung Karls Ⅴ
1532年,神聖ローマ皇帝カール5世治下の帝国議会で成立した帝国刑事法典。ラテン語ではConstitutio Carolina criminalis。219条から成る。バンベルク刑事裁判令Bambergische Halsgerichtsordnungとその起草者であるシュワルツェンベルクJohann Schwarzenberg(1463-1528)の影響が大である。中世後期には,各領邦において平和の要請が高まるとともに,ローマ・カノン刑事法の影響があって,刑罰は賠償金主義から死刑をはじめとする実刑主義へ,刑事訴訟法は被害者による訴追主義から官憲による糺問主義へと転換するが,いまだ法的安定性に欠けていた。当法典は,これを矯正し,刑事法を改革するための帝国最初の統一的刑事立法である。これにはドイツ固有法と外来法との巧妙な融合が見られる。この成立後18世紀前半までの各領邦では,これはドイツ全土に通じる刑事普通法として権威を持ちつつも,漸次これからの逸脱も生じ,18世紀後半の啓蒙期以後,逸脱は決定的なものとなった。
執筆者:塙 浩
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報