日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンバリク」の意味・わかりやすい解説
カンバリク
かんばりく
Khanbalïq
中国、北京(ペキン)のこと。カン(ハン)の町の意。フビライは1264年金朝の故都である中都を冬の都とし、3年後その北東郊外の現北京の地に大都を造営した。それ以後モンゴルの帝都の呼称としてトルコ語によるこの名がしだいにイスラム世界や西欧にまで広まった。ただ元代の同時代記録ではカンバリクは金帝の都であった旧中都をさし、大都はダイドゥと原音名で呼び分けている場合が多いが、マルコ・ポーロの『東方見聞録』ではこの区別があいまいで、両市全体の総称としても使っている。大都地区はのちに明(みん)・清(しん)時代の北京の内城、中都地区は外城に変身するように、実質上一つの町であったから、カンバリクはいわば帝都、京師(けいし)の意ともいえる。モンゴル帝国の衰退後もこの名は中央アジア以西で生き続け、ティームール朝第2代シャー・ルフの遣明使節(1420~21北京滞在)をはじめ、17世紀のロシアの使節でも北京をこうよび、18世紀初期の使用例も確認される。
[杉山正明]