化学辞典 第2版 「ガラスの分相」の解説
ガラスの分相
ガラスノブンソウ
phase separation of glass
液相温度以下の温度域において,単一相のガラスが2種類以上のガラス相に分離する現象で,液-液不混和現象の一種.図1に示すように,AとBの2種類の化学組成をもつ成分が混合し,ガラスとなる系において,図1(b)のように混合によって系の自由エネルギーが大きくなる(不安定になる)場合に,CとDの組成からなる二相ガラスが現れる.
図1(b)のαの組成領域(系の自由エネルギーが上に凸系のか所)では,系の自由エネルギーが組成に対して微小な組成変動で必ず低下し,新相(第二相)の核生成のためのエネルギー障壁が存在しないので,一気に新相が成長する.そのため,図1(b),および図2(a)に示すような「からみあい」あるいは「スピノーダル」構造とよばれるような分相組織になる.また,βの組成領域(系の自由エネルギーが下に凸系のか所)では,微小な組成変動が局所的に発生しても,一時的に自由エネルギーが大きくなるためエネルギー障壁が生じ,新相は核生成→成長機構を経由して生成する.そのため,図2(b)に示すような「液滴」あるいは「バイノーダル」構造とよばれるような分相組織になる.
分相が最初に見いだされたのはNa2O-B2O3-SiO2系ガラスで,「からみあい」型の分相組織を利用して,これから96% シリカであるバイコールガラスが1938年につくられた.電子顕微鏡の解像力の向上により,1956年にはじめて分相が視覚的にとらえられ,以後Na2O-SiO2系,Na2O-CaO-SiO2系,そのほかのガラス系に次々と分相が見いだされ,J.W. CahnやW. Hallerなどによる理論づけが行われた.「からみあい」型分相を利用して多孔質ガラスがつくられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報